炎の国ルート
「ルビカ様、どうかお側にいさせてください。どうか…」
“子ども”からどんどん”女性”に成長していく姿に、ノリアは日々心を痛めていました。告げたくても告げられないこの気持ちに
もそろそろ限界が近づいてきていました。
他の国の王子たちがルビカに好意をもっていることにももちろん気づいていましたが、もう一人厄介な人が。
「ルビカ様ぁ!!!!ミクモと結婚してぇええええ!」
ミクモは妹。そして女性。いくら結婚したいと言ってもできないのは当然のこと。ただ、自分の思いが伝えられない今、ストレートに思いをぶつけられるミクモが羨ましくもあり、また、行動力のある 2 人が惹かれ合ったらこの世の常識が変わってしまうことも十分あり得ることだろうと、ノリアは考えていました。
とある日、突然ノリアが牢屋に入れられる事件が起きます。困惑するルビカ。
「ど、どういうことだ?!父上!!!ノリアになんてことするんだ!!!!!!!」
「ノリアは罪を犯した。我が国の裏切り者だ。」
王族にも家来たちにも厚い信望を置かれていたノリア。ルビカは納得がいかず、一人で情報収集することに決めます。
バレないように髪を切り、男に変装をし、一般国民のフリをして街を歩き回り情報を聞き回っていました。そこでルビカは、挨拶回りで街を歩く時には気づかなかった、あらゆる国民の姿を目にします。
イジめられる子どもたち、別国の恋人と会いたくても会えない人たち、国の統一を毎日天に祈る人たち…。そんな人々の姿を見ていく内に、この国を変えたい!変えるべきだ!と一層強く思うようになるのでした。
その頃城では、ノリアがいなくなりてんやわんや。警備体制も崩れ、ルビカもいなくなり、大変な騒ぎになっていました。
リスの力も借りながら、ルビカは一般国民のフリをして城の牢屋に侵入します。そこには、憔悴しきっているノリアが。
「ノリア!!ノリア!!しっかりして!!」
ノリアは目を覚ましません。
「どうしよう……ノリア、お願いだから、目を覚まして!!!」
緩んだ服から見える腰元にふと目をやると、解けた服の間から少し焼けたような水の国の国章が…。
「……なんでノリアが…水の国……なんで……どうして………。」
今まで一番信頼してきた人。幼い頃からずっと傍にいた人…。その人がまさか水の国の…。何か事情があるかもしれない、隠
してまで炎の国に潜入しなければいけない何か理由が…
しかしそんな考えも今は頭をよぎらず、ルビカは動揺を隠せずにいるのでした。
何日かの間、ルビカは冷静に自分自身と向き合いました。ノリアのことは未だに驚きを隠せませんでしたが、ノリアの抱えている秘密や思い、そして国民の思いをなんとかしたいと、日に日に強く感じるようになるのでした。
ある日、ルビカは城に戻り、城の者全員を集め、話をします。
「アタシだけだと思ってたんだ。国が分かれているのがおかしいって感じてるの。でも違った。みんな…みんなそうだったんだ。出身国が違うからって何が違うの……同じ人間じゃん。だからノリアも……ノリア……。こんなことおかしい!!こんな国、おかしい!!!変える!!アタシが変えてやる!!!!!」
険しい表情の現王。
「お前の決意には敬意を払う。だがな、裏切り者をそのままにしておくことはできないのだよ。……近々処罰を下す。」
「?!?!?!なんで!!!なんで何も聞かず勝手に決めつけるんだ!!!アタシの求めていた国はこんなんじゃない……こんな国、アタシはいらない!!」
そう強く言い放って、城を出ていくのでした。
ルビカはその後、王族との連絡を一切遮断し、一般国民として生活することを決めます。
ルビカとして姿は明かさずに国民と過ごす毎日………。ミクモの家に世話になりながら、国民の生の声を聞いていくのでした。
「ねえ~そろそろ教えてよぉ~~~なんでルビカ様はここにいんの?しかも男装までしてさ~~~絶対お兄ちゃん心配してるよ~~。」
ノリア……。ミクモには絶対言えない秘密をルビカはごまかすのに必死でした。
「ノリア…今頃探してるかな。ははっ。」
「お兄ちゃん腕落ちたんじゃない?すぐ見つけられると思ったけど……まあでもその方がミクモ嬉しいけどねっ!!こんなカッコいいルビカ様と一つ屋根の下☆最高!!!ねえ~~お兄ちゃんには黙っててあげるからさ~~今日もチューしてぇ~~~いいでしょう~~~?」
その間、ルビカはいつも側にいたノリアがいないことの大きさを知ることになります。ノリアのことが気になり、気がかりで、珍し くネガティブなことを考えては”もしもの展開”を想像し、不安に息が詰まるのでした。
一刻も早く、ノリアを救いたい。いつの間にか、頭の中はノリアのことばかりになっていました。密かに見張りをつけていた現炎の王も、そんな娘の姿に、少しずつ心が動いていくのでした。
ある日。
ルビカは決意を固めます。
王族の挨拶が行われる月曜日。ルビカは、いつも通り王族の格好をし、いつも通り城に立ちます。ざわめく国民たち…。
「あれ?ルビカ様?」「ルビカ様、帰ってきたのか?」「あの髪型……もしかして街にいたのは?」
ルビカは凛とした表情で、大声であいさつします。
「みんな~~~!!ごめん!!!アタシ、ルビカ!!男の振りしてごめん!!!アタシわかったよ!!みんなの願いとか、想いとか……全部わかった!!これからは大丈夫。アタシがみんなを守る!!絶対、絶対この国を一つにしてみせる!!!アタシがこの国の王だーーーーー!!」
この一件で国民はルビカの味方をし、国を一つにするために力を合わせることとなりました。
王はルビカのその姿を認め、ノリアを牢屋から解放します。
「ノリア、とりあえず話をしよう。処罰はそれ以降だ。」
「ありがとうございます……。」
そして、ノリアは膝をつきながら、生い立ちについて話をします。
水の国で生まれたノリアは、従者として育てられ、幼い頃に水の国の国章を刻みました。母親は彼を産んですぐに亡くなり、父と2人暮らしでした。従者としての仕事は苦労ばかりで、好きなこともできず、ただ従うだけの毎日。まだ若いノリアにとっては、酷な生活でした。
そんな時、ルビカに出会いました。カステロで遊んでいるところを少し見ただけですが、胸が高鳴り、圧倒的なオーラを感じ、尽くすならこの人に、と思うようになりました。それ以降も、ルビカの逞しさ、優しさをどんどん感じ、更に惹かれていくように…。ノリアは、とある決断をします。裏で紹介してもらった彫師に連絡をし、水の国章の上から炎の国章を刻んでもらうこと。見つかったらどうなるかもわからない。命がなくなるかもしれない。でも、そんな不安よりも、ただルビカの側にいたい。その一心で、若いノリアは大きな秘密を抱えることになりました。
その頃、父が炎の国の女性と関係をもち、ミクモが生まれます。出生がバレないように、父は水の国に残り、その女性とミクモは炎の国で住むことに。ノリアもこれを機に、こっそり炎の国に移り住むこととなります。
そこから炎の王族に仕えるようになったのです。
「全てはルビカ様、貴女を想う気持ちからです。私情を持ち込んでしまい、申し訳ございませんでした。ルビカ様。貴女は私に
とって、かけがえのない、太陽のような存在なのです。」
現王は、ノリアの肩に優しく触れ、言葉を述べます。
「ノリア、お前のしたことは現状では許されることでない。どうかルビカの思いに応えてやってくれ。国を一つに。それがお前に対する処罰だ。」
涙が止まらないルビカ。
「ノリア……アタシ、当たり前でわからなかった。ノリアが側にいることが当たり前で…ノリアがいなくなったらどうしようって……アタシ…アタシにとっても…………大切な人だよ、ノリア………」
ノリアとルビカの想いが通じた瞬間でした。